昔ある所にネズミの夫婦がいました。その夫婦にはとても可愛がっている一人娘がいました。

その娘が成長し夫婦は娘のために国一番の婿を見つけようと探し始めました。

ある日のこと夫婦はふと空を見上げました。

「そうだ、あの太陽さんがいるじゃないか。太陽さんはいつも天高くにいてみんなを照らしてくれている。国一番じゃないか」

太陽に頼みに行きました。すると太陽は「私なんか雲が出てきたら隠れてしまう。雲さんの方が一番だよ」

「なるほど」と、今度は雲のところへ行きました。

「私なんか風が吹いて来たら飛ばされてしまうよ。風さんが一番だよ」

「じゃあ風さんだ」

「風さん、娘を嫁にして下さい」すると「私も強い方だが、そんな私でも壁には参ってしまう」

「そうか……そうだ」

「壁さん、どうか娘を嫁にして下さい」

「俺は誰にも負けないがたった一つ勝てない者がいるんだ。それはネズミだよ。ネズミは俺をかじって大きな穴を開け、最後は倒してしまいやがる。俺はネズミにはまったくお手上げだ」

疲れ切っていた夫婦は、ハッとしました。

「そうだ同じネズミが娘の婿に最もふさわしい」

このお話はなんと鎌倉時代にできた話で日蓮聖人と同時代の無住という僧侶が『沙石集』の中で語っています。

これには様々な教訓が込められていますがその一つに、幸せは彼方にあるのではなく既に足元にあるのだと教えています。

日蓮大聖人はこのことわりを「この土(世界)を捨てて何れの土を願うべきや」と述べられています。

しかし、私たちは辛い事が多い日々の中で、一体この世界のどこに幸せがあるのか、と思いがちです。でもここで「辛い」という字を思い浮かべて下さい。

「辛い」の上に「一」を足せば「幸い」という字になるではありませんか。この支えとなる「一」こそ仏様を信じる心ではないか。何事もめげずに進みましょう。