コラム 執着(しゅうちゃく)
仏教では執着を離れることを説く。我欲に囚われるほど人の世界は狭くなるからだ。
世界の広さを『分子』、私たちの欲を『分母』と仮定してみよう。世界の広さが十、欲が二であれば、見える世界は五に止まる。欲が五に膨らめば世界は二の広さにまで縮んでしまう。しかし逆に欲が減って一になれば、世界は本来の十の姿を現す。
では我欲が限りなくゼロに近づけばどうなるか。数学において分母がゼロに近づくとき、その値は無限大へと向かう。つまり一切の執着をなくせば、世界は無限の広がりを見せる。これこそが『仏の心』である。自分を勘定に入れず利他の行を積む。そうして我欲という制約から解き放たれたとき、人は自由な心で無限に広がる世界を存分に楽しむことができるのである。
