3月の法話 法っと一息/小林謙照


 旬のものって美味しいですよね!今の時期だと、春キャベツ、鯛、牡蠣、椎茸など、想像しただけでよだれが出てきます!

 人は昔から「旬の食材」を大切にしてきました。現代のように食べ物が豊富にあるわけではありませんから、おそらく少ない量で効率よく栄養を摂取することが基本だったのでしょう。昔の人は長年の経験から、食材はそれぞれいつもより栄養価と旨味が増加していて、身体に良い時期があるということを知っていたのかもしれません。まさに自然の恵みですね。

 ところで、完全栄養食品といわれる「卵」も春が旬だということ、ご存知でしたか?有精卵に限るそうですが、冬から春の期間はひとつの卵が母体の中で時間をかけて成熟されるため、この時期が一番栄養価が高くなるのだそうです。そのため、奈良時代には病人や病後の体力回復の妙薬としてとても珍重されていたとか。

 「妙薬」と言えば、私たちに日頃から気づきを与えてくれる法華経。その中の寿量品というお経のなかに良医治子(ろういじし)の喩えというお話があります。

 誤って毒薬を飲んで狂ってしまいそれを治す薬を飲もうとしない子どもたちを救うため、良医である父が姿を隠し、遠国で自分が死んだと伝えさせます。子どもたちは、父がなくなった悲しみのなかで正気を取り戻し父が遺していった良薬を服して病気が治る、と言う話です。良医は仏様で子供が私たち衆生をさすと言われています。

 現代に生きる我々は目の前のことに忙殺され、本当に大切なことが見えていない、まさに狂った子供のような状態と言えます。そんな時こそ法華経が「旬の妙薬」ではないでしょうか。

 心静かにお題目をお唱えして法の滋味を味わい心の平穏を取り戻し、そして旬の食材で体の滋養を増強する。春の息吹を感じるこの季節、毎日頑張っている自分を、身も心も共にねぎらってみてはいかがでしょうか。