7月の法話 初心忘るべからず/倉橋観隆 

 先日大雨の中、駅前の横断歩道を渡ろうとした時、信号無視をした自転車が突っ込んで来ました。

 「危ない」間一髪、衝突は避けられましたが私の傘は飛んで相手も転びそうになりました。

 その自転車に乗っていたのは女子高生。右手には傘とペットボトル、左手にはスマホ。さらに自転車は電動自転車。かなりのスピードが出ていました。

 次の瞬間「赤信号だぞ前を見なさい」声を荒げていました。「ごめんなさい」彼女は体勢を立て直しそのまま走り去りました。両者怪我なくすみましたがこんな事故が最近頻発しています。

 私は瞬間、大声で相手を責めましたが後で冷静に振り返えると小学二年の折り彼女と同じ事をしたのを思い出し、ハッとしました。

 初めて自転車に乗れた時の事。父に後ろを支えてもらって力いっぱいペダルを踏みました。「離すで」父が手を離しても真っ直ぐ走れました。「やった!」あの時の感動、父への感謝。しかし時と共に自由に操れるようになり、そのうち手離し運転をするようになりました。それがある時バランスを崩し、歩行者の列へ突っ込んでしまいました。その時も双方怪我もなくすみましたが、慣れが油断を招きそれが事故に繋がる事を改めて思い起しました。

 私たちは往往にして最初は新鮮で感謝の念も懐きます。しかし時が経ち慣れて来るとその状況が当たり前になり、さらにそれが高じておごりとなってはいないでしょうか。

 この「おごりの心」を法華経では「増上慢」と呼んで心を蝕む猛毒だと説いています。

 ではこの毒を消す妙薬はあるのでしょうか?

 あります!この心を固く戒めた法華経。そのエキスである「南無妙法蓮華経」がそれです。この妙薬を日々口に唱え、心に頂くことで毒に冒された自分に気付かせて頂けるのです。

 初心は忘れがちになるもの。だからこそ日々初心に戻る努力が必要なのです。