4月の法話 おかげさま/當山第三十二世日法上人遺稿

鳥居と桜 さる名刹にお詣りしたときのこと。本堂正面に置いてある大きな賽銭箱に「おかげさま」と書かれているのに気づいた。普通は「賽銭」などと書く。

 賽銭というのは、お寺や神社へお詣りしたときにお供えするお金である。賽銭をお供えする人の気持ちはそれぞれだ。ただなんということなしに、お詣りに来た印としてお供えする人。どうか願いを成就させて下さいと、祈りをお賽銭に託してお供えする人。これらが普通の気持ちであろう。

 では「おかげさま」とはどういう意味なのか。自分が今日このようにあることができるのはなんといってもまず父母がおり、先祖がいたからである。毎日いろいろな食べ物をいただいて身体を養っていけるのも、日々服を着ることができるのも他の人々がいるが故のことである。さらに、命を維持できるのは私たちの住む世界があり、太陽や空気・水があるからである。

 このように私たちは、あらゆるものに支えられ、恵みの中に生かしていただいているのである。即ち、すべてに対しまた仏祖三宝に対し感謝しなくてはならない。これが「おかげさま」ということなのである。

 その気持ちをもってお賽銭をお供えし、毎日を生きていかねばならないという教えが、賽銭箱に書かれている「おかげさま」という言葉なのだと思う。
 また、このお寺の座敷の衝立には次のように書かれていた。

 一、みんなで力を合わせましょう
 二、決められた事は守りましょう
 三、堪え忍びましょう
 四、修養につとめましょう
 五、心を統一して静め安らかにしましょう
 六、まちがった考えまちがった見方を去り、正しい考え正しい見方をしましょう

 これは六波羅蜜という修行であるが、皆が日々おかげさまという感謝の気持ちをもち、六波羅蜜の修行を心がけていけば住みよい平和な社会になるのである