7月の法話 「明日」よりも「今」/宮本観靖

 先日新聞を見ていると、テレビドラマで言っていた「私のお気に入りの決めゼリフ」という特集をやっていました。

 私などは「お気に入りのセリフは?」なんて聞かれてもパッと思い浮かびませんが、そこには「あーこんなんあった、あった」というようなセリフがいくらか載っていました。

 たとえば、「あっしには、かかわりのねえことでござんす」これは、木枯し紋次郎の、天涯孤独の境遇を象徴する決めゼリフとされているそうです。また恋愛ドラマからは「僕は死にましぇん」という今ではギャグにも使われているセリフも載っていました。

 そんな中で、目に留まったのが「明日やろうは馬鹿野郎だ」というセリフでした。これは今やっているドラマのセリフらしいのですが、なかなか胸にドキリとして同時にズシンとくる言葉です。

 このセリフの前に「後悔するなよ。いつも明日が来ると思ったら痛い目にあうぞ」という言葉があるのですが、私などは昔から後悔の連続です。「あの時こうしていれば、その場でやっていれば…」と今になって思う事が多々あります。その時は「まぁ次回でもいいか」と思っているのですが、結局次回は来ず、その機会は二度と訪れなかった、という事もありました。

 私達は普段明日が来るのは当たり前と思って生活していますが、考えてみると自分が元気に明日を迎えられる一〇〇%の保障は何処にもありません。だからこそ「明日でいいや」ではなく今やれることをきっちりとやる事が大切なのです。

 「明日」とは「今」の延長です。「今」が「明日」を作り、それが将来に繋がっていくのです。「今」の生き方によって「明日」の生き方が変わると言っても過言ではないように思います。

 日蓮聖人は『富木殿御書』で「一生空しく過ごして万歳悔ゆることなかれ」とおっしゃっています。時々、刻々、その瞬間を大切に生きる事が悔いのない人生をもたらす事になるのです。