11月の法話 光陰矢の如し/倉橋観隆

「光陰矢の如し」といいますが今年も早十一月に入りました。

「年を取るほど日が経つのが早い」あなたもよく口にされませんか?

実はこの思いにはちゃんとした裏付けがあり、公式まであるとか。

「一年÷年齢=感覚時間」

これは「ジャネーの法則」といって、十九世紀フランスのポール・ジャネーという哲学者の説です。

彼によると年齢が増すごとに感覚時間が短くなり時が経つのを早く感じるそうです。

根拠は色々考えられ、その一つに初めての所へ行く時、行きは遠くに感じるが帰りは意外と近く感じる。

こんな感覚はありませんか?実は一度経験すると無意識にも次の予測が立つからだそうです。

日々の生活も小さい頃は今日何があるかわからない。

しかし成長するほどに次はどうなるか予想がつく。つまり経験値の多さに反比例して経過時間を短く感じるそうです。

 

さてこんな句があります。

「門松や冥土の旅の一里塚めでたくもあり、めでたくもなし」

これはトンチで有名な一休さんの句だといわれています。

正月の門松は新年を祝う象徴ではあるが、一方で一つ年を取ることは棺桶に一歩近づいた。

そこで「めでたくもあり、めでたくもなし」と詠んだということです。

 

では、年を重ねる私たちは如何に生きて行けばよいのか。身近でそれを教えてくれている物があります。

ローソクを思い浮かべて下さい。

燃えるローソクは時と共に確実に短くなって行きます。

正に私たちの人生の象徴です。

しかしそのローソクの姿はどんな樣子か。

そう、我が身を燃やし明かりに変えて周囲を照らしてくれています。

我が命有る限り他の為に使う。

それが与えられた我が命を生かし切る事になるんだよ。

こんな事をその姿が気付かせてくれます。これをお経は「菩薩行」と教えます。

私たちも菩薩です。あっという間の人生、経験値を他の為に活かしましょう。

 

残り少ない今年に悔いなく「ジャアネー」と言う為に。