コラム 髻中明珠喩(一)

 大国の王である転輪王は小国を平定するため討伐に出向きそこで戦功をあげた部下にそれぞれの手柄に応じて様々な褒美を与えました。しかし転輪王は自分の髻の中の宝珠だけは決して与えませんでした。何故なら、この宝珠は王位を象徴するものだからです。

 如来の場合もこれと同じです。如来は真理を獲得した全

世界の王ですが、多くの魔王(煩悩)は如来に服従しません。そこで修行者達が魔王と戦い、そこで戦功をあげた者に様々な教えを説きました。その教えを聞いた修行者達は煩悩を滅することができたと喜びましたが、それでも如来は法華経だけは説きませんでした。なぜなら法華経は如来の知恵に至らしめる最高の教えですが、その真意がわからない人にとっては返って仇となってしまうからです。