2月の法話 カレーライス!/詠裡庵

 私の大好きなカレーライス。子供の頃、御誕生日のお祝いはカレーライスだった。

 朝から楽しみでその日は早く夕食にならないか気にかかった。家に入るとあの香りが家中に広がって私を迎えてくれるようだった。

 カレーライスが手軽に食卓に出るようになったのは固形のルーが出回るようになってからのことだった。

 それ以前は缶入りのカレー粉を使って手間暇かけて作っていたのを想い出す。

 ご飯が主食の日本では、お茶漬けや丼飯などは古くからあったが、香辛料のきいたカレーをかけて食べるのは明治以降のことだ。

 カレー粉と共に外国(主にイギリス)から入ってきた当時のレシピを見ると、「残り物の冷肉」という今の私たちには意味不明の食材が出ている。何のことかと思ったら、イギリスの習慣で週の初めにこしらえたローストビーフを一週間かけて食べる。その残りだという。カレー料理は週末に食べるもののようだった。

 今の日本のカレーライスは、日本独自のもので、カレーの本場インドの人が食べてもとても美味しいという。ただし、インドの人に言わせると日本のカレーはインドのカレー料理ではないそうだ。

 この元日に能登半島を中心に甚大な被害をもたらした大地震。

 安穏な日々の暮らしを奪われた方々が、一日も早く元の生活を取り戻すことをお祈りするばかりだが、テレビの報道を見ていてまず思うのは、温かい食事を摂ることができているのだろうかということだった。被災直後はまず、水と空腹を満たす食料である。でも被災の不安はそれだけでは和らぐことはないだろう。

 やはり温かいものをお腹に入れたとき、心の緊張も緩むのではないかと思う。そんな時、温かいカレーライスが配られているのをテレビで見た。

 「温かいこのカレーライスで、心も暖められました」

 温かく香り豊かなカレーライス。子供の頃食べたカレーライスを想い出した。