1月の法話 ほそく長く/日 慧

 新年を迎え、毎年のことですが、その年の干支(えと)に因んだ御守りを準備します。
今年は巳(み)年で、蛇がデザインされた御守りです。

 ただ蛇というとなぜか敬遠されがちです。

 「今年は蛇か」

 御守り売り場に来た人も見てはいても、手に取ろうという人は他の干支と較べると多くはないようです。

 これがウサギ年だと、

 「可愛いな、これください」

 すぐ手に取って求めて行く人が多いのです。

 意匠を凝らした御守りを見れば、制作者の工夫と創意が読み取れるのですが、それでも蛇をデザインした御守りは可愛さの点で言えば、ウサギには及ばないのかもしれません。

 巳年生まれの人にとっては、面白くないことかもしれませんね。でも巳は敬遠すべきものではないのです。そこで今年の干支である巳について述べます。

 巳の刻といえば午前十時頃前後二時間ほどを指します。朝起きてから動き出し活動が本格化する頃です。また季節でいえば春から夏にかかる頃。冬ごもりしていた蛇が出てきて動き出す時季なので、巳を当てたのだといいます。

 つまり巳というのは、行動や物事が始まる、閉じていた巣穴が開く、ということを表しており、ものの始まり、幕開けという意味があります。敬遠されるどころか、希望に満ちた縁起のよいものではないでしょうか。

 また蛇は古来、金運を呼び豊穣を司る神あるいはその眷属として、神聖な生き物とされてきました。運を切り拓く妙見大菩薩の御尊像で、手に蛇を持った姿もあります。

 昨年を振り返り世界に目を向ければ、戦争の拡大が懸念される情勢が続き、日本国内においても元旦に始まる地震や各地に被害をもたらした大雨など自然災害に悩まされた一年でした。世の中が落ち着かず心安まることのない日々。蛇が脱皮するように、これらの災害・災難が抜け落ちて、幸せな世の中がほそく長く続くことを祈念致します。