1月の法話 仏様の願い/服部憲厚

 今年も新しい年を迎え、全国各地の神社仏閣は初詣の人々で賑わいを見せています。
宗教離れが進んでいるとはいえ、昔も今も、正月には必ず初詣に行って手を合わせる人は多いはずです。
私も、初詣の方々をお迎えする立場ではありますが、今年こそはよい年になるようにと、一年の安泰を祈って手を合わせました。

 家内安全・身体健全……皆それぞれに一年の願いを持って、それぞれの思いで手を合わせ祈ります。正月は仏様にとっても忙しい月かもしれません。初詣に来た人々の膨大なお願い事が押し寄せてくるからです。賑わう境内、慌ただしい正月の空気。仏様のお顔を拝すると「私だってお願いしたいよ。」今にもそんな声が聞こえてきそうです。

 そういえば、私達はいつもお願いするばかりです。仏様は私達の願いを何でも聞いてくれそうな慈悲深いお顔をされていますが、仏様には願いがないのでしょうか。
そんな疑問を持った私は仏様の答えをお経に見つけることができました。
 「私はいつもこう考えています。どのようにして生きとし生けるものを救いの道に入れ、仏と同じ最高の幸せを与えてあげることができるだろうかと」(『妙法蓮華経』如来寿量品第十六)

 仏様の願いはただ一つ、生きとし生ける全てのものの幸せ。自分ではなく他者への祈りです。改めて仏様の大きな優しさに気づかされました。

 他人の苦しみを自分の苦しみに感じ、他人の喜びを自分の喜びにできる人は、苦しさも多いでしょうが、幸せも人一倍であるはずです。一方、私はいつも自分の願いばかり……。仏様から叱られそうです。

 とはいうものの、私達はやはり凡夫、自分の幸せばかりを考えてしまいがちです。でも、それはまた自身の努力すべき目標として大切なことです。

 今年の初詣には、いつものお願いにもう一つ、みんなの幸せを願って仏様のお手伝いをしてみてはいかがでしょうか。