1月の法話 当たり前の事/宮本観靖


 「人の嫌がる事言ったらあかんのにー」

 先日、幼稚園に通う息子が二歳年下の妹とケンカした時に言った言葉です。

 幼稚園入園以来、その成長ぶりに驚く毎日ですが、特に言葉の変化は質、量共に大きく、私も舌を巻くほどの口達者ぶりです。

 反対にまだ上手に話せない妹は、お兄ちゃんとケンカした時はいつも言葉で泣かされてしまい、最後のセリフは

いつも「お兄ちゃんのアホ!大嫌い!」です。すると息子は冒頭のセリフでやり返すのです。

 ある時、私が息子に「お前も妹の嫌がること言っているぞ」と間に入って言うと、息子は少し考えて「うん。言ったら駄目やと思っているけどケンカしたら言ってしまうねん」と神妙な口調で答えたのです。

 考えてみると、これは子供の世界だけではなく、私達大人の世界でもよくある話だと思います。

 「人の嫌がる事を言ってはいけない」これは子供の頃、多くの人が親や先生から教えてもらった事でしょう。それを皆分かっていながら、怒り等で相手への思いやりが欠けてしまっている時、心無い言葉で人を傷つけてしまっています。

 私達が信仰する「妙法蓮華経(法華経)」の中に修行の方法を説かれた「安楽行品」というお話があります。その中に言葉に対する戒めが説かれています。

 それは、「人の悪口を言ってはいけない。この人は好き、この人は嫌いと言ったり、他人を馬鹿にしてはいけない」といったものです。改めて見てみると当たり前のことが説かれています。しかし、あえて説かれているということは、その当たり前の事すら出来ていないのが私達なのです。言葉で人を傷つけたり、落ち込ませたりしたことはないでしょうか。自らを省みると反省ばかりです。

 新年を迎え、新たな目標を持つと同時に、今一度当たり前の事を当たり前に出来る様「人の嫌がる事は言わない」と誰にでも自信を持って言える様に心がけ、行動する事が大切です。