6月の法話 変化の人/宮本観靖


 先日久し振りにお会いしたYさんからお聞きしたお話です。

 Yさんは会社の人事異動に伴い転勤され、新たな人間関係にうまく馴染めなかったそうです。それに加え、ご近所のトラブルもあり、ストレスで少し体を壊してしまいました。

 心も不安定になり、いつも人の目が気になったそうです。自分でもこのままでは病気になってしまうと思った時、久し振りに友人と話す機会がありました。話を聞いてくれていた友人は最後にこう言ってくれたそうです。

 「周りを気にせず、自分が正しいと思う事すればいいんやで」
Yさんはその時の事をこう仰ってました。「普通の状況で聞けば何気ない言葉なのかもしれませんが、その時の私にとって友人のその言葉は、肩の力がスッと抜け、本当にホッと安心できるものでした。この一言で救われたのです」と。

 私達が信仰する「妙法蓮華経」(法華経)には「変化の人」という御言葉が出て来ます。「変化の人」とは法華経を信仰する人が苦しい困難に会った時、仏様や菩薩様が姿を変えてその人を助け励まし、そして成長させる為にこの世に現れるものだと説かれています。

 仏様がお姿を変えて現れたのが「変化の人」。そしてその仏様は私達の心の中にもおられます。他の人に慈愛の気持ちを持った時、その人を助けたいと思った時、それは私達の心におられる仏様が現れた時です。私達が自分の持っている仏様の心で人を思う時、Yさんの友人の様に他の人を救う「変化の人」となれるのではないでしょうか。

 苦しい時やつらい時、思わぬ人、そして言葉に救われたという経験がある方もおられるでしょう。

 「法華経」を信じ、素直な心になって周りを見渡せば「変化の人」は必ず現れてくれるでしょう。しかしその為には、私達も他の人にとっての「変化の人」になれるよう、慈しみの心を持って精進していかなくてはなりません。