2月の法話 生命に宿る仏性/桑木信弘

 冷たい冬の大気。

 白い息を吐きながら見上げると冬らしく煌めく星たちが澄んだ夜空に拡がっています。

 周囲は米を作る棚田がある為、日照以外の余分な光を当てぬように外灯も少ないので夜は暗く、沈黙の空に月も静かに浮かびます。

 霜が降りた棚田は昇る朝日と共に濃霧となり、霧の中に輝く太陽は黄金にさえみえます。

 山の上から望めばそこには雲海が拡がります。

 便利な都会生活にはない生活リズムと感覚。

 時間の流れに刻まれる社会生活に、私たちは息を切らせながらも息をしている事すら忘れてしまう日々に疲れきってしまう事もあります。


 「忙しい」とは「心を亡くす」ことだと言います。

 先日、寒い中をハイキングの途中にお寺を訪れた年輩の夫婦。大阪市内からみえたそうで本堂の前でお参りをすますと、

「能勢の自然に触れていると人らしい感覚を思い出すようだ」と気持ちよさそうに伸びをして深呼吸をしながら歩いていかれました。

 お寺の境内には一本の大きな古い松の木が立っています。

 私が能勢へ来た十年程前、その松は葉がほぼ赤くて枯れていました。

 このままでは切り倒されてしまう。

 長きにわたり境内で檀信徒を見守って来た松。

 先代住職と二人で何とかならないものかと優しく撫でたり話しかけたりしました。

 時には手を触れながらお題目を唱えました。 

 すると徐々に葉が緑になり始め、今では毎年、美しく緑を輝かせています。 

 仏さまの教えでは、すべての生き物に仏性が宿っているといいます。

 木や草花に、人の心がけや感情に応える生命の息吹きがあるというよい体験をしました。

 そして、私たちの心の奥深くには蓮華の華が在ります。南無妙法蓮華経と唱える事で、心中の蓮の華が少しずつ私たちの生命の息吹きと共に開き始めます。

 妙見大菩薩と心で語らい北極星を中心とした星々の宇宙の息吹きと、私たちが忘れがちな生命の鼓動を感じるために、是非とも妙見山にお参りください。