8月の法話 五山の送り火/箕浦 渓介

 毎年8月16日の夜、京都では大文字五山の送り火という行事が行われます。京都の夏を彩る風物詩で、コロナ禍で2年規模を縮小して行われましたが、去年本来のかたちの全面点火で行われました。

 五山ですから五つです。東山の「大」の文字に続き北の山に「妙法」の文字が浮かびます。妙なる法ということで仏法のことです。そして西の山に移り「舟形」といって船の形をした絵のすがたが浮かびます。次に「左大文字」最後に「鳥居形」です。

 これはいつの時代から始まりどういう意味があるのかなど今はネットですぐ検索できますが、一つの物語を思い浮かべてみました。

 お盆にはご先祖がこの世にかえってきて、お盆の期間を終えてまたあの世にかえっていくと言い伝えられています。ご先祖皆さんが大きな船に乗ってかえっていき鳥居をくぐってもとの世界にかえるようすをこの目で見える形で文字に絵にしてみんなで見送る風習なのでしょう。

 鳥居は神社で私たちが住むこの世とあの世を区別する結界です。神の国日本に伝来した仏教が発展するなかで神仏習合という独特な宗教の形態が生まれます。その神仏習合の名残りか、この世とあの世を結ぶ門からご先祖を見送るということです。

 ここで大事なことは妙法です。ご先祖がこの世にかえってくるというのもあの世にかえっていくというのも妙法という仏さまの教えの中にあるということです。そしてご先祖とそれを見送る今を生きている私たちが妙法の中につながってあるということです。

 お盆というご縁で故人のことを思うのです。いつでも思うことはできますが、私たちはいつもは自分のことで精いっぱい、生きることで精いっぱいでいつもその方のことを思って生きることはできません。ただこのお盆のご縁、お彼岸でも故人の命日でもそうですが、その方のことを思うのです。思う中に実は仏さまから思われていることに気づかせていただけるのです。