2月の法話 恵方巻き/小林謙照


 鬼は外!福は内!二月の節分といえば「豆まき」を思い浮かべるかたが多いと思いますが、関西ではもうひとつ忘れてはならないものがあります。みなさん、何かわかりますか?・・・そうです!「恵方巻き」です!

 もともと、近畿地方では一般的だったようですが、大手コンビニ・スーパーの宣伝により今では全国区となっています!

 起源は諸説あり、大阪の商人たちにより商売繁盛と厄払いの意味で始まったという説や、花街(遊郭)での縁起担ぎ、漁師の遊びなど様々です。

 共通しているのは、立春前日の節分、二月三日に食べるということ。古くは立春を一年の始まりとしたために、大晦日と同じように考えられて来ました。

 その年の幸福を招くとされる方角「恵方」を向き、福を巻き込むということから巻き寿司。さらに、縁を切らないよう、包丁を入れずに丸ごと一本。願いごとをしながら黙々と最後まで食べる、というのが作法のようです。

 二〇一五年の恵方は「西南西やや西」です。作法を知り、願いを込めて食べれば、より一層ご利益があるかもしれませんね。

 さて、巻物といえば私たち僧侶にも大切な巻物があります。それは、お経が巻かれている経巻です。

 海苔で巻かれてはいませんが、生きとし生けるものすべてが幸福でありますように!というお釈迦様の願いが巻き込まれています。

 恵方巻きのお米は一粒一粒が多くの苦労によって生み出され、私たちの命を支える尊い存在です。

 それと同じようにお経の文字も「一一文文是真仏」といわれます。これは「法華経」の一文字ずつに仏様が宿っており、私たちの命を救ってくださる尊い存在であると言うことです。

 恵方巻きと経巻、食べ物と法(おしえ)、どちらも私たちが生きていく上で、貴く大切なものです。

 新たな季節の始まり、尊い巻物を心と体で味わいたいと思います。