2月の法話 油断/新實信導

 今年に入ってインフルエンザ患者が倍増しているそうだ。このインフルエンザウイルスはウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いからA・B・Cの三型に分けられているという。ヨーロッパ諸国ではインフルエンザの特効薬が効かない薬剤耐性株が流行している。日本ではまだ二・六%と少ないが、今冬では諸外国のように耐性株が増加する可能性があるそうだ。

 ところで、今年初めてインフルエンザワクチンの予防接種を受けた。予防接種を受けてもインフルエンザにかかることがあると聞いていたので、手洗いやうがいは欠かすことなく行っていた。だが、予防の甲斐なくインフルエンザにかかった。その時は突然やってきた。午前十時頃から背中がゾクゾクとし、腰が重くて体調が優れない。これはやばいぞ、もしかしたらインフルエンザに感染したかも知れないと思い、医者のもとへ走った。まだ発症してないので今は検査ができない。しばらく様子を見てください、もし三八度以上の熱が出たらまた来るようにとのこと。そして次の日、体温計を手に取り脇に挟んで測るとなんと三八度。熱との戦いが始まるのかと思いつつ病院へ出向いた。鼻の粘膜を採取して調べた結果、A型のインフルエンザと判定が下った。診察を終え薬を処方してもらい自宅で隔離生活が始まった。

 インフルエンザで寝込んだ三日間は実にいい勉強をさせられた。高熱にうなされ、身体の節々に痛みが走る。早く病気が治って、この状態から逃れたいという思いと、なるようにしかならないとう居直りの思いが心の中で交差する。さらに予防接種を受けたから大丈夫だという油断があったに違いない。この油断を攻める心も容赦なく入り込んで身も心も葛藤が生じた。そして、動けないことの辛さと、動けることの幸せを改めて考えさせられた。「怠けるんじゃないぞ!」とお叱りを受けた気がしたのは気のせいではあるまい。生きていることの有り難さを再確認した出来事だった。