4月の法話 家祈祷(やぎとう)/植田観龍

 新入生、新社会人の皆さん御入学、御入社おめでとうございます。街中では新入生や新社会人の姿が目に付きます。初々しさが何とも爽やかでこちらも身が引き締まる思いです。

 先日の出来事です。Aさんがこの四月から転勤となり引っ越しをしました。ついては新居の家祈祷の依頼をAさんから受けました。

 当日、Aさんのお宅に着くなり奥さんに「ところで、家祈祷って何ですか?」と聞かれました。やはり若い人には馴染みが無いんだなあと思いつつも、どうしたら分かりやすく説明できるか考えました。

 一年間の家内安全を、家に住まわれているいろんな神さまにお願いするのです。どの土地にも神さんはいらっしゃいます。誰でもそうですが自分の家や部屋に勝手に入ってこられるのと、ちょっと寄らしてもらうよと一声あるのとないのとでは感じ方が違いますよね?勝手に入ってこられたら腹立ちますが、断りがあるとそう怒る事も無いのではないでしょうか。

 人でさえそうなんですからましてや土地の神さんはなおさらの事だと思います。転居の時だけでなく家を建てかえる時にもそれぞれの土地には神さんがいらっしゃる訳ですからお断わりを入れるべきだと思います。

 こう説明すると、奥さんは、「よく分かりました。確かにそうですよね」と納得してくれました。私も一安心して一生懸命に家祈祷させて頂きました。

 私自身、いつも思うことですが、自分さえ良ければいいと思っている人が多い昨今、相手の立場に立って考えてみる事を日頃から心掛けたいものです。

 布施の一つに「心施」というものがあります。これは相手を思いやるという慈悲の心を持ち、他のために心を配り心底から共に喜び、悲しむことができ、他の痛みや苦しみを自分の痛みや苦しみとして感じ取れる気持ちのことです。自分が自分がという「が(我)」を殺しても犯罪にはならないと思います。かえって人の心が暖かくなるはずです。