10月の法話 仏さまはいつもソバにいる/小林謙照

 さぁ、十月は待ちに待った新そばの季節ですね!我が家は親子でソバにハマり息子に至ってはそばつゆに浸けずにそのまま味わうソバ通っぷり。ウンチク好きにならないことを祈ります(笑)ちなみに、夏に収穫されたものを夏新。秋に収穫されたものを秋新、と呼ぶそうです(↑ウンチク)

 

 まだ続きます。

 実は蕎麦と仏教は切っても切れない、縁が深い食べ物です。

 天台宗の修行で7年間をかけあわせて千日間、お経を唱えながらひたすら歩く荒行「千日回峰行」というものがあります。行の最中は『五穀断ち』といって、穀物を穢れにまみれた俗世の物とし、穀物を食べずに身を清浄にするそうです。蕎麦は五穀には入らないため、修行者の大切な栄養源となっているとか。

 また、麺状の蕎麦、いわゆる『そば切り』は福岡県にある臨済宗の承天寺の僧聖一(しょういち)国師が挽き臼による製粉技術を日本に持ち込み、中国の麺文化(ラーメン・うどん・そば)を日本に伝えたそうです。ちなみに【そば屋】の発祥は大阪城築城のときにできた『砂場』と言われています。

 さらに、江戸時代には、世田谷にある称住院の寺中道光庵の庵主がつくる蕎麦が評判となり、そば切り寺と呼ばれるようになりました。魚類の出汁を使わず、精進汁(干し椎茸、昆布)に辛味大根の絞り汁を添えて出していたそうです。そば屋の屋号に「○○庵」というのが多いのは、ここからきているとか。

 というわけで、仏教修行者のソバにはいつも蕎麦がある、という長い長いウンチクにお付き合いいただき誠にありがとうございました。

 さて、秋の夜長、日蓮聖人門家のみなさまは、きっと寸暇を惜しんで仏教の勉強をされていること存じますが、これからの寒い季節ちょっと休憩がてら、あたたかい蕎麦湯でも飲みながら、仏教と蕎麦のウンチクを思い出していただけたら幸いです。