5月の法話 耳を傾ければ/倉橋観隆

 私は会話をしていてよく相手と同時に言葉を発する時があります。俗に「かぶり合う」とでもいうのでしょうか。

 先日、ある会話術の本を読んでいるとこの件について書かれていました。

 「それは癖で相手の話を聞いているふりをしていて実は最後まで聞いていない証拠。話の途中から次に自分は何を言おうかと考えているせっかちな人に多い」
との指摘。「これはまさに自分の話だ」と反省させられました。

 そんな時ふと思い浮かんだのが七福神のお姿です。恵比寿・大黒天・毘沙門天弁財天・布袋・福禄寿・寿老人。七神七様の全く異なるお姿ですが一つ共通点があることに気付きました。それは皆様耳がとても大きいということです。これは耳を大きくして人の話をよく聞け、という戒めが込められているのではないか。とするならそれこそが福の神を招く第一条件となるのでは、と思った次第です。

 さらに「聞く」というと思い浮かぶ方が聖徳太子です。太子は同時に十人の話を聞き分けたということは有名ですが、同時にというのは実は皆の話によく耳を傾けられたということではないでしょうか。太子が制定されたという『十七条憲法』の第十七条には物事を独断で決めてはいけない。必ず皆で論議して判断せよと説かれています。つまり周りの意見にもよく耳を傾けよ、ということだったのでしょう。

 「聞く」というテーマでお話を進めて来ましたがここでクイズを一問。

 あなたが生まれて一番最初に聞いたのは誰の声でしょう。お母さん?それとも…?答えはあなた自身の声のはずです。そして生涯一番多く聞くのも自分の声ではないですか。ならば「聞く」の根本はまず自分が発する言葉に自分が耳を傾けるべきかと思います。その時、恐らく何かの気付きが与えられることでしょう。

 最後に日蓮様のお言葉に耳を傾けて下さい。「災いは口より出て身を破る。幸いは心より出て我を飾る」