4月の法話 心の毒を除くには/相川大輔


 ここ最近、用事で街にいく機会が多い。通りを歩くとコンビニやレストラン、カフェなど様々なお店が並んでいる。そんな中を歩くと「あのお店のハンバーガーを食べたいな」とか「おいしいカフェオレを飲みたいな」などという気持ちが沸々と湧いて出てくる。お店の看板が私の心に欲を喚起するのである。

 改めて考えると、私たちはテレビCMや雑誌、街や電車内の広告、ネット上の広告など、心を刺激して様々な欲を起こさせる社会に生きている。それらの欲を満たせないと怒りが生じるし、欲が満たされても次々と他の欲が湧いてきて際限ない。この悪循環に気づかないのでどんどんストレスがたまっていき、心身に悪影響を与える。仏教ではこの「欲」「怒り」「無知」(気づかないこと)を三毒という。これらの毒を心から取り除けば、ストレスを生じることなくもっと楽に生きていけるのである。

 お釈迦様の在世中、仏弟子たちは三毒を除くために修行した。彼らの生活する僧房には特に飾りもなく殺風景で、あるものといえば翌日の朝食用の食材と三着の衣だけだったという。もちろん、これは戒律に定められていたということもあるが、それは心に欲を喚起させないこと、自分の心を三毒から守ることが目的だったのである。

 では、お釈迦様不在の時代、しかも人の心身に三毒が巡りめぐるストレス時代にある私たちは、どのようにして心の平安を得ることができるのか。その処方箋が法華経への信仰である。なぜならば、法華経はお釈迦様の教えのエッセンスであり、言うなればお釈迦様のエネルギーそのもの。法華経を通して仏の大慈悲に触れることで、私たちの心にも自分以外の存在への慈悲の心が喚起されるのだ。この慈悲の光に照らされると、自分に生じた欲や怒りの心情がいかにつまらないものであるかということに気づくことができ、その結果、ストレスの原因である三毒を除くことができるのである。