4月の法話 新生活/宮本観靖

 四月になり、随分と春らしい陽気になってまいりました。この季節は年度替りということで入学、入社など新生活をスタートさせる人も多い事でしょう。新たな気持ちになるこの季節にはぴったりです。

 新生活といえば、実家を出て一人暮らしを始める方もいると思います。一人暮らしを始める時は、嬉しさや希望といった何かワクワクした気分になるものです。

 先日新聞に、一人暮らしを始めた人のアンケートが載っていました。それによると一人暮しの良い所は、自分一人の自由な時間が持てること。反対に悪い所は、自炊等の家事が面倒という事だそうです。

 私も大学に入学した時、一人暮らしにあこがれ、実家から通える距離にもかかわらず、安いアパートを探して住み始めました。五畳一間で風呂なし、トイレと台所は共同で、家賃は一万五千円ほどでした。狭い所でしたが、自分の自由な空間を持てた事がとても嬉しかった事を覚えています。

 両親には事後報告で、気が向いた時だけ帰るなど、今から考えると随分と勝手な事をしていたなぁと思います。しかしそんな勝手気ままな私に、両親は小言も言わず温かく見守っていてくれていました。それは相変わらず迷惑をかけ続けている今でも変わりません。

 自分も人の親となり思うことですが、親とは絶えず子供を心配し、見守っているものなのだなと感じます。

 私達が信仰する仏様も同じ様に私達を見守っていてくれています。「法華経」の提婆達多品には「衆生を慈念すること猶お赤子の如し」とのお言葉があります。仏様は全ての人の苦しみを救おうと、母親が赤子を慈しむ様な心で絶えず見守っていてくれているのです。

 親と同じ様に見守っていてくれている仏様。その仏様を始め、家族等多くの方々の温かな思いを心に止め、その思いに答えられる様に成長したいものです。

 新生活には不安は付き物ですが、仏様や皆の温かな思いがそれを吹き飛ばしてくれることでしょう。