5月の法話 食育/末田真啓

 

 大学病院の管理栄養士として勤務する傍ら、非営利団体のフードバンクの運動を自ら立ち上げて主宰している従姉と話をする機会があって、あらためて「食」について考えてみました。

 フードバンクは食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り福祉施設等へ無料で提供するという活動です。アメリカでは既に四〇年の歴史がありますが日本では最近始まったところだそうです。企業にとっては廃棄費用の軽減にもなるし、福祉活動に貢献する事で企業価値の向上につながり、近年ではもったいないという観点からも注目されています。

 世界人口のうち一〇億人は食べ過ぎ四〇億人は栄養不足ともいわれています。

 食生活の洋風化が進み、食卓に並ぶ食品の構成はすっかり変わりました。主食であるコメは半分以下、小麦は四倍、畜産物・牛乳・乳製品は二十八倍、肉類は十三倍という統計もあります。所得水準が上昇すると穀類の消費が減り、たんぱく質や油脂類が増えるという「食べ物の世界の公式」があるそうですが、その結果、肥満や様々な成人病が大きな社会問題となっています。

 そして、その食料の大半は外国からの輸入品によっています。例えばラーメン一品をとってみても、自給率は18%で、平成二十一年の食料全体の自給率は40%まで下がっています。食料の自給率は政治や経済の問題と考えられがちですが、日本の伝統的な食生活によって自給率を上げることもできるといわれています。つまり、「日本型食生活」に回帰することで国産農産物の需要を増やしていくという考え方です。

 言うまでもなく、食について考えるときに大切なことは、自給率や経済面での数字だけではありません。食事の前にお唱えする「食法」には、「天の三光に身を温め、地の五穀に神(たましい)を養う、皆これ本仏の慈悲なり…」という一節があります。すべての命あるものに感謝することこそ「食育」の根幹です。