7月の法話 同じ屋根の下/詠裡庵

 「天井裏で、チュウと言う泣き声とチョコチョコと走る足音、その後から少し大きな動物の足音が響いてくるんですよ」
「ウチも、天井裏を走る小さな足音と、それを追っかけるような少し大きな足音が響いてますんや」
 ご近所の人たちが集まるとこの頃そんな話で盛り上がる。

 山や田畑に囲まれた家に住んでいると、退治しても退治しても繰り返し聞こえる足音だ。食べ物があるからと言う人もいるが、そればかりではないらしい。雨風が当たらないし、暑さ寒さも家の外よりましなのかしら、またやってくる。

 田舎の家はゆったり建てられているので、知らない同居家族も多い。ネズミ、イタチ、蜘蛛、アリ等々。

 先日は猪の子が、池の中で死んでいた。小さな池だから、自らおぼれて死んだとも思えない。アライグマか何に襲われたのだろう。猪の家族は、まるで自分の家にいるようなつもりで人間の庭にまで入ってきているから、子供が無防備にも一人歩きしていて外敵にやられたのかも知れない。

 どの家もそんな、あたかも野生動物の天国のような状態だから何とかしたいけれど、これならという対策が出てこない。堂々巡りをするばかりだ。そこで、ウチではこうだ、いや私の所ではこんなだというように被害状況についての話がどんどん広がっていく。

 困った時には、誰かに話した方がよい。問題の解決までできなくても、自分だけではないと気づいて気持ちが楽になる。一緒に考えようという気持ちが出てくる。もし話し相手がいないときには、文章にしたり、メモ書きしたりすると、それだけでも心の整理が出来て、第三者であるかのように、気持ちを整えながら考えることが出来る。

 そんな気持ちになって今一度、状況を分析してみよう。ネズミがいる、イタチがいる、アライグマが出てくる、猪もいる。何がいけないの? 自然を満喫できる。それでいいじゃないですか? そうかもね。