7月の法話 小欲知足/植田観龍

P1040725 先月は六月中に台風が上陸するなど近年まれに見る異例な気象状況でした。

 先日、そんな台風の中を仕事で出かけた際、小さな城下町のとある寺院の掲示板で次のような句を見つけました。

「命を大切にしようと言いながら、命を食べて生きている私たち、食事の時はせめて合掌し、『いただきます』とお唱えしましょう」

「いただきます」とは、
①あなたの命を私の命にさせて頂きます。
②無駄な殺生はせず、命を大切に頂きます。
③あなたの分まで仏道修行に精進させて頂きます。
という大切な教えが含まれています。

 法華経の中に「少欲知足(略)得其福報」という言葉があります。欲を少なくして足るを知るものは幸せになるという意味です。

 「福」とは、今日一日を家族全員が事故無く健康で生活できること。つまりは「少欲知足」の生き方こそが幸せな生活への近道なのです。

 橘曙寛という歌人の「たのしみは/妻子むつまじく/うちつどい/頭ならべて/物をくふ時」という有名な歌があります。これもまた「少欲知足」の精神の一つではないでしょうか。

 現代社会は飽食の時代と言われます。行き過ぎた生活からは不平・不満や苦しみしか生まれません。また何でも手に入る生活の中ではよけいに、求めても得られないときの苦しみが倍増します。このような欲しい物が手に入らないときに感じる苦痛を「求不得苦(ぐふとっく)」と言います。

 お釈迦様はこの苦しみについて、欲しいという欲望を抑えることで苦しみは静まる、とお示しになられています。つまり欲を少なくして手に入るもので満足すると言うことは仏教徒の基本的な生活態度なのです。

 今年の夏も昨年と同様に国は節電を呼びかけています。電力不足は自分達の生活を見直し、前向きに対処していく良い機会とも考えられます。その時に「少欲知足」という言葉を思い出して下さい。