6月の法話 それぞれの実りと収穫を/桑木信弘

 能勢の山々も新緑に染まり、私のお寺の周りに広がる棚田にも水が張られ一斉に田植えがされました。

 棚田は昔より先人達が大変な苦労をして造り上げてきたものだそうです。

 春の暖かさを実感出来るようになったこれからの季節、晴天には水田に青空と白い雲が映し出され、まるで合わせ鏡の様な美しい光景が能勢を彩ります。

 苗は、これから秋まで太陽と雨と、母なる大地の恵みの水により成熟していきます。

 さて、現代のように、人工衛星の観測で天候を予測し、灌漑など整備しての農業と違い、天地の恵みのみが頼りの昔の人々にとっては、今とは比べものにならないほど自然界に畏怖の念を覚えていました。

 そのため古代中国では、天を観察し、不動の北極星を中心とした星の運行に天地と人の在り方を感じ、重視していたといいます。

 十二支で北は子の方角である事から北極星は子星とも言われ、沖縄ではニヌファブシ(子の方星)と言います。さらにその歌がありその歌詞の中に、

 天上に群れる星は数えれば数え切れても親の教えは数え切れぬ
 夜の海を往く船は北極星を目当てにする
 私を生んだ親は私の目当て宝玉と言えど磨かねば錆びてしまう
 朝夕と心を磨きながら日々を生きて行こう
 満たされている時ほど謙虚さを忘れてはならぬ
 稲穂が実ると頭を垂れる

とあります。

 先人、親の苦労や周りとの縁を忘れ、ついつい不平や愚痴を溢しては心を曇らせる私達。

 お釈迦様は、少欲知足に器から溢れるだけの徳の力で生活しなさいと説かれました。

 今年も残り半年です。

 皆様も気持ちを新たに、この歌のように星の神様、妙見菩薩に手を合わせ日々に感謝を忘れず心の錆を削り、自らの器に徳を積めるよう精進し、私達それぞれの稲穂を実らせ、よき収穫の年としましょう。