6月の法話 言葉の力/小林謙照
「うっせぇうっせぇうっせぇわ!あなたが思うより健康です!」
子どもたちが流行曲のサビを楽しそうにマネしています。
Ado(アド)というアーティストの「うっせぇわ」という曲。
毒のある、反骨精神に満ちた歌詞で、社会人のストレスを歌い上げています。
正直共感できるところも多いです。が、やはり我が子が「うっせぇうっせぇ」と連呼していると少し複雑な気持ちになります。
言葉の力を侮るなかれ。毒のある言葉遣いが身についてしまうと、知らぬ間に周りの人を嫌な気持ちにさせてしまうし、同じく毒のある言葉遣いをする人間が周りに集まってしまいます。
果たして、周りに毒が多い環境は幸せでしょうか。
仏教では克服すべき根本的な煩悩を『三毒』と言います。
一は貪欲(とんよく)=際限なく、必要以上にあれこれ欲すること。
二は瞋恚(しんに)=怒りや憎しみ嫉妬などの不快な感情を撒き散らすこと。
三は愚痴(ぐち)=誤った物の見方、愚かさ。
毒づくことは二つ目の瞋恚にあたります。
そして三毒のやっかいなところは、自分では気付きにくいという点です。
皆さんもイライラしているときや、どうしても欲しいものがあるときなどは、自分のことも周りのことも見えていないはずです。
もし、幸運にも自分の中の『三毒』に気付くことができたのなら、しっかり心の動きを観察して、振り回されないようにお気をつけ下さい。
私も、まだまだ僧侶としても親としても未熟者ですが、子どもたちの模範になるように、できるだけ欲を抑え、怒りを鎮め、愚かな行動をとらないようにしたいと心掛けています。
度重なる自粛要請で、あれはダメこれはダメと言われ、いい加減に「うっせぇわ」と言いたくなるこの頃ですが、毒を吐くのは毒を飲んでいるのと同じ事。
食べ物が体を作るように、言葉は心を作ります。
こんな時こそ、お釈迦様が我々に残して下さった法華経という良薬を飲んで、心穏やかに過ごしましょう。