10月の法話 明日は明日 今日は今日/詠裡庵


「明日で良いことは今日するな」などという名言(迷言?)がどこかの国にあるそうです。

 思わずにやりとしたくなりますが、今の自分を見ていると、笑ってもいられません。この原稿にしても、明日で良い、と思っている内に大慌てで今書いている始末です。せめてもう二日もあれどんなにゆったりした気持ちでいることができたでしょうか。

 でも今の私にはもっと差し迫った問題があります。

 今日中に部屋の整理をしなくてはならないのです。事務室や寝室など、身内の者だけが使う部屋は、お客様の目に触れることはないため、整理整頓はついつい後回しになります。自分だけが判れば良いというので棚の整理もあまりせず、其ればかりか、棚の前にも書類や様々な事務資料などが積み重ねられていきます。

 ところがその棚が不具合を生じました。作り付けのものなので、簡単に取り替えることもできず、職人さんに入ってもらわなくてはならないのです。修理作業をするためには、周囲のものを片付けなくてはなりません。日々の積み重ねで、物置と化した部屋を片付けるのは容易なことではありません。ウッカリ物を動かすと、後で大変なことになります。大事な書類がどこへ行ったか捜すのは大仕事です。一つずつ確認して整理するしかないのです。

 こんなときに限って、急の用事や不意の来客があったりで、思うように進みません。日々の積み重ねでこうなったのですから、こうなる前に、毎日その都度きちんと整理していれば良かったのに……。出るのはため息ばかり。日頃の整理が大切だと実感しました。

「時のしからしむるのみ」と日蓮聖人は『報恩抄』に示されています。物事にはタイミングがある、その時々にすべきことをする。これが法華経の生き方だというのです。先ず心の整理から始めてすべきことをすれば、何事も慌てることなく対処できます。信仰とはそんな心の整理に通じるものなのではないでしょうか。