1月の法話 年頭に心がけるべきワンポイント/日 慧

 新春を迎えてご挨拶申し上げます。本年も何卒よろしくお願い申しあげます。

 今年は戊戌(つちのえいぬ)の年です。イヌというと「犬」の字を思い浮かべます。私のそばには生まれたときから、いつも犬がおりました。大きな犬を飼っていたときは、犬小屋で一緒に寝たこともあります。特に想い出に残る犬は、先代が友人からもらい受けてきた柴犬でした。我が家では唯一彼だけが、血統書をもつ犬でした。とても賢い犬で、彼には自分の名前を自分の口から言わせようと考えて、「イチ」と名付けました。それからは彼に名前を聞くと、ちゃんとしかも英語で「ワン」と答えるようになりました。

 ところで今年の干支(えと)である戌は犬と読み方は同じでも意味は少し違っています。戌(いぬ)は成の字を見れば判るように、草木が老成し熟すという意味を持っています。時刻でいえば、夕餉を迎える一番気持ちの休まる時期です。ただ熟した状態というのは頂点を迎えた時期ということで、この先はもう尽きた状態、つまり衰えを表す字であるとも言えます。

 これに対して、戊(つちのえ)は、上にクサカンムリをつけると判るように、草木が盛んに茂っている様子を表します。また時刻でいえば、日の出の前後で非常に勢いのよい時刻を表しています。

 戊戌となると、このように物事の始まりと、その終わりの結果を端的に表していると考えられます。今まで積み重ねてきた努力の結果を享受出来る年であるとともに、反省すべき点は素直に改めて、これからの目標をしっかり立てて歩み始めるべき年でもあるということです。

 宗祖日蓮大聖人は『立正安国論』に「汝早く信仰の寸心を改めて、速やかに実成の一善に帰せよ」と説いて、仏の説かれた唯一最高の教えである法華経を信ずべきだと示されました。

 信仰に限らず、過去を見つめ直し、新たな境地に踏み込む大事な年だと心すべきでしょう。