5月の法話 一期一会/中山 教諒

 高校の課外授業で私は茶道を履修した。茶道は日本の伝統的文化である。その始まりは、仏前への献茶、作法を取り入れたことだ。また、平安時代には修行僧が眠気覚まし、病の薬に御茶を服用していたらしい。 茶道ではお客を招待して茶会を開くことがある。ある日、私は茶会での点前をすることになった。お点前とは自分が点てた御茶を人に

飲んでもらうというシンプルな作法である。しかし大勢の人前でお点前する茶会に不安を感じた私は、茶道講師の先生に個人指導を志願した。けれども、茶会への緊張で私は練習に身が入らない。そんな私を見かねた先生は練習を中断し、突然茶道の大成者である千利休の逸話を語り始める。私は戸惑いながらも、先生の逸話に耳を傾けた。

 『利休がある日、上林竹庵という茶人から茶会に招かれて、弟子とその茶会に訪れる。竹庵は喜んで、お点前をするが、嬉しさ感極まり、思うように御茶を点てれず失態を晒した。しかし、利休は「日本一の点前で御座る。」と竹庵に感心して茶会を後にする。すると、利休の弟子が「なぜあんなお点前を日本一と褒めたのですか。」と訊いた。利休は「私を茶会に招く者は、邪念を抱く。自分のお点前を誇示し、希少な御茶の自慢をする等、態度と言動で一目瞭然だ。けれども竹庵は違う。茶会へ招いた私たちを歓迎し、一服の御茶を飲ませたいと心込めてお点前に臨んでいた。私は竹庵の心持ちに感心したのである。』と答えた。

 私が茶会に緊張していたのはお点前の失敗を恐れたからだ。つまり、自分のことしか考えていなかった。先生は千利休の逸話を通じて、技術よりも、相手を気遣い、心込めてお点前することだと伝えたかったのであろう。それはお点前のみならず人としても、決して欠けてはいけないものだ。 茶道に出会えたこと、これはまさしく「一期一会」一生に一度の出会いだ。茶道で得た経験を糧に、今までもこれからも「出会い」を大切にしていきたい。