4月の法話 名は体を表す/倉橋観隆

本紙を手に取って下さったあなた。お財布の中の5円玉を取り出して、その穴を通して向こうをのぞいて見て下さい。

今、どんな情景があなたには見えていますか?

穴の直径はたった5ミリです。ですが見えている範囲は数百倍、いや数万倍の広い景色が見えているはずです。

その見方をちょっと変えれば、その穴に広い世界が凝縮されているとも考えられないでしょうか。

この道理は「一」の中には「全体」が含まれる。だからこそ一つのことをおろそかにしてはいけないよ、というお釈迦様の教えの根本にも通じていくのです。

この教えを受けて日蓮大聖人は『四信五品抄(ししんごほんしょう)』というお手紙に次のように語っておられます。

「日本の二字に六十六国の人・畜・財を摂尽(しょうじん)して一つも残さず」

すなわち鎌倉時代、六十六の国から成り立っていた日本全体。そこに生きる人をはじめ家畜や財産。ひいては山川草木総ては一つも漏れずに「日本」という、たった二文字の中に含まれているのだと説かれています。すなわち呼び名とは、そのものが持っている一切を包括し象徴するものだよと教えられているのです。

この教えをあなた自身に当てはめて、今一度自分の名前を考えてみて下さい。

「名は体を表す」といいます。わずかな文字数ですが、自身の総てが名前に凝縮され、同時に自分を象徴するものとなっていることに気付くでしょう。

親が愛情と希望を込めて誕生の時に、人生最初のプレゼントとして与えてくれた名前。しかし、それは余りにも身近過ぎてその思いを忘れてしまってはいないでしょうか?

そんな重みを持つ大切な自分の名前。

もっと意識を向け、そして誇りを持ち、その名に恥じない日々を過ごさなければならないのではないでしょうか。

5円の穴をご縁に今一度!