2月の法話 初一念(しょいちねん)/倉橋観隆

 ある大きな森のお話。そこには様々な草花や木々が生い茂り、たくさんの動物たちが平和に暮らしていました。

 ところがある日、突然火事が起こりました。さあ大変。動物たちは一目散で森の外へ逃げ出します。でも草木は逃げられません。次々に焼かれて行きます。

 そんな中、一羽のオウムがまさに燃えさかる炎の方に向かって飛んでいくではありませんか。仲間は言いました。「オウムくん、そっちへ行ったら焼け死んでしまうよ」オウムは答えました。「わかってる。でも草木のみんなは逃げられない。みんな焼け死んでしまう。少しでもボクの力で火を消したいんだ」

 よく見るとオウムの体は濡れています。羽に着いた水滴をバタバタさせて火にかけているではありませんか。水を落とすと今度は川の方へ飛んで行きます。頭からザブンと飛び込み全身ずぶ濡れで、また森に向かって飛んで行き、羽をバタバタ。何十回、何百回と繰り返します。でもそんなことで火は消えません。とうとうオウムは力尽きて地面に落ち、息絶えてしまいました。

 と、その時です。空が一天にわかにかき曇り、バケツをひっくり返したような雨が降り出しました。その雨で次々と火が消えていったのです。

 実はその雨、オウムの姿を見た天の神様の感動の涙だったのです。それは他の仲間が「そんなことどうせ無理」と決めてかかる中、オウムは森の仲間を思い、「出来るか出来ないかではなく、無駄かもしれないけれどボクはやれるだけやるんだ」という覚悟に神様は感動したのです。

 私達は往々にしてやる前から結果を想定して「出来るか出来ないか」と考えがちです。しかし大切なのは「やるかやらないか」の覚悟ではないでしょうか。最初のこの覚悟を「初一念」といいます。 

 節分を迎える今月、新たな年のスタートです。何か目標を決め「初一念」で過ごそうではありませんか。