4月の法話 思いやりの心/箕浦 渓介

春になり寒さが和らいでくると、花粉症がきつくなる。私の症状が出始めたのが身延山在学中である。

身延山は春になり風が吹くと大量の花粉が飛んで一面に黄色い霧がかかったような状態になり、お堂を繋ぐ廊下は黄色い絨毯を敷いたかのような光景となる。もはや悪夢である。まさか能勢でも同じ光景を見る事になろうとは……、悪夢の再現というしかない。

花粉症は最近になっての病気である。50年近くも前に木材需給が逼迫し、それを補う為に大量のスギ人工林が全国各地に植えられた。しかし、かつて高値で取引された木材は海外からの安価な輸入材に取って代わられ、伐期を迎えても伐採されない大量のスギ人工林が花粉症の背景にある。

アレルギーは1960年代より急増し、今や日本人の3人に1人が何らかのアレルギーに罹っているといわれている。その病原のアレルゲンは1000種にも上り患者も増加の一途とか。

コロナ禍になり、最近はあまり見かけなくなったが「県外ナンバーですが、県内在住です。」と書いてある張り紙を見かけたことがある。そういえば県外ナンバーへの嫌がらせがあったというテレビの報道があった。また、「私は花粉症ですよ。」という、バッチを配布している所もあるという新聞記事も読んだことがある。以前にはなかったと思うが、他人のくしゃみが気になる人が八割もいるそうで、かく言う私も花粉症なので肩身の狭い思い、やるせない気持ちになることがある。中にはマスクに直接「私は、花粉症です」と書いているという人もいるという。見聞きするたびに世知辛い世の中になったなあと思う次第である。

仏典に、和顔愛語(わげんあいご)先意承問(せんいじょうもん)という言葉がある。和顔は柔和な表情、愛語は思いやりあふれた言葉をかけること。先意承問は、相手の心に思いを巡らせて寄り添うことである。いつでも相手の事を思いやれる心こそ、いまとても大事なことではないだろうか。