コラム 降伏(ごうぶく)
降伏という語は読み方によってまったく異なる意味になります。
一般的な「こうふく」と読めば外の敵に降参することになります。
仏教読みで「ごうぶく」と言えば、自分の内に潜む煩悩や悪心などを打ち負かす。
あるいは修行の妨げとなる悪鬼邪神の類いを下し伏すことを言います。
釈尊が菩提樹の下で悟りを得るため瞑想に入ったのを見た悪魔が、最後の誘惑を試みて攻めてきた時、釈尊はこれに気をとめることなく成道されたと言います。
釈尊の降魔成道の瞬間です。
仏教の降伏は悪魔を徹底的に打ちのめすのではなく、その悪い性を取り除き、悪魔にも安楽を与えようとの慈悲心に基づくものなのです。
降伏すべきは自身の心中に潜む魔です。
対象を外に求めていては真の平和は実現しないというのが、仏の教えなのです。