コラム 道具(どうぐ)

 大工道具、家財道具など、器具の総称をいい、日常生活で広く使われる言葉だ。広辞苑に「仏道修行の用具。仏具」とあるように、もとは仏教用語で『仏道修行に具(そな)えるもの』という意味だった。

 仏道修行では必要最低限の道具しか所持を許されなかった。小乗では三衣と鉢、座具、それに飲み水をこすための漉(ろく)水(すい)嚢(のう)。大乗はこれに加えて杖、ようじ、香炉、手拭い、小刀、経巻、仏像その他全部で十八物と定められていた。

 しかもこれらの「道具」はそれぞれ一つしか所持を許されなかった。そして、必要ではない余分のもののことを「長(じよう)物(もつ)」と呼んだ。現代でも過剰にある不要なものを「無用の長物」というが、語源はここにある。 断捨離が言われて久しいが、長物の整理が必要なこの頃である。