9月の法話 変身/日 慧

 同じ生姜なのに、乾燥させると成分が変わり、味も良くなり、身体を温めるという効能も増したウルトラ生姜になる。NHKの「ためしてガッテン」の話です。

 乾燥させてカリカリにするだけで変身するとは、まったく驚きました。でも考えてみると、世の中、びっくりするような変身をするものはたくさんあります。昆虫などは幼虫と成虫ではかなり違います。

 中でも圧倒的なのは蝶です。気持ち悪いあのイモムシを見て、綺麗な羽を広げて空中を舞う様子はとても想像できません。

 これに比して、人間には変身は見られないように思われます。たしかに赤ちゃんの頃から、少しずつは変わっていきます。でも、ひと頃流行っていたウルトラマンや仮面ライダーのように、身体が突然大きくなるなどの変身は見られません。

 でも、人間にも変身はあります。「成(じよう)仏(ぶつ)」というのがそれだと私は思います。

 成仏というと、死んだ人に、「迷わず成仏してくれよ」などと、何となく死んでからの話だと思われがちですが、そうではありません。文字通りに言えば、「仏になる」ことが成仏。この世の真理に目覚め、悟りを得た人を仏と呼びます。ウルトラマンならぬ、ウルトラ人間とでも言ったらいいのでしょうか。いわば人間の究極の理想像と考えればよいのでしょうか。

 一般に「神仏(かみほとけ)」と並べて呼びますが、神とは、例えばキリスト教の神は、万物の創造主であり、当然人間も神によって作られたものです。従って神の気持ちにそぐわなければ、抹消されても人間としては文句も言えません。

 それに対して、仏とは人間の究極の理想像ですから、私たちも仏になることが出来るのです。仏のなさったご修行の功徳は全て妙法蓮華経の五字に具足しており、これを信じ行ずることにより、私たちも仏の功徳をいただき、成仏することが出来るとされます。お題目を身に口に心に行じ、仏=ウルトラ人間に変身することが出来るのです。