11月の法話 法華経読誦の功徳/倉橋観隆
今年のNHK大河ドラマは『鎌倉殿の十三人』が放映されています。
源頼朝が鎌倉幕府を起こし、北条氏が実権を握っていく過程が描かれています。この時代に生きられたのが日蓮大聖人です。
ところで頼朝は非常に熱心に法華経を読誦していました。
日蓮大聖人もこの功徳で頼朝が幕府を起こすことが出来たと称賛されています。
大聖人はその頼朝にまつわる次の様な逸話を語っておられます。
筑紫の国に大橋太郎という御家人がおりました。
ある事件で頼朝の怒りをかい鎌倉の牢に幽閉されたのです。
太郎に間もなく男児が生まれましたが、その子は父の顔を知りません。
物心ついた童子は母に父のことを尋ねました。
その時母は父のことを案ずるならば仏様への給仕と法華経読誦に励むよう諭しました。
童子が十二才になった時、鎌倉へ出て鶴岡八幡宮に父の無事を祈り、神前で法華経を読誦し始めました。
そこへ参詣した家臣の耳に神殿に響き渡るお経の声が入って来たのです。
見ると童子が経本も見ず全巻諳(そら)んじているではないですか。
澄み切った声に感動し早速主君にこのことを告げました。
頼朝はすぐにその童子を連れてくるようにと命じました。
頼朝は童子のお経を聞いている内に我知らず涙で頬をぬらしてしまいました。
折しもその時、ある囚人がこれより処刑される旨の報告が入りました。
そのことを耳にした童子が涙ぐんだのです。
いぶかしく思った頼朝がその訳を質すと、父の身の上と重なったと答えました。
なんとその囚人は童子の父だったのです。
頼朝は即刻処刑を中止させ、罪を許し所領を安堵させたということです。
まさに法華経読誦の功徳の甚大なる例証として大聖人はたびたび弟子、信徒に語られていました。
法華経には読誦が最重要修行として勧奨され、同時にその功徳が随所に説かれています。
私たちも今一度自ら法華経の経力を確信しようではありませんか。