12月の法話 虎党に学ぶアレ/服部憲厚

 今年は、プロ野球阪神タイガースが38年ぶり2度目の日本一に輝いた。

 本家虎党の方々からお叱りを受ける前に正直に言っておくが、私は「にわか虎党」である。しかし、にわかにとっても今年は面目躍如たる年であった。

 岡田監督の名采配や選手達の圧巻のプレーもさることながら、最も褒め讃えねばならないのは、38年もの長き間、挫けることなく直向に応援し続けた本家虎党の皆さんたちではないだろうか。日本一が決まった瞬間「長かった…」とこれまでの道のりを振り返り、涙で縦縞を濡らした虎党達の歓喜の姿を見た時そう思わずにはいられなかった。

 彼らの精神は、泥臭いが実に美しい。最下位が続こうが、負けが込もうが、チームや選手たちを見捨てぬ覚悟と愛情。今年一世を風靡した「アレ」だが、彼らは苦節38年、毎年変わらず「アレ」を夢見て信じ続けたのである。

 その姿は、純粋無垢に一つの物事を信じられる強く尊い稀有な心でもある。

 日々お題目を信じ行ずる私たちも、虎党達のように直向に一筋に「信心」ができているだろうか。

 日蓮聖人は門下に対し信心とはどうあるべきかを次のように説いておられる。
「法華経を信じる人は様々いる。例えば火のように信ずる人。これは法華経の素晴らしさを聞いた時は、燃え立つような気持ちになるが、日が経ち遠ざかればその教えも捨ててしまうような信心である。一方で水のように信じる人もいる。こちらは、常にどんな時でも、絶えず法華経を持つ揺るぎない信心である。我らは水のように法華経を信じなければならない。それこそ尊い信心の姿である」(『上野殿御返事』意訳)

 改めて、水の如き不屈の精神で、38年ぶりの「アレ」を手にした虎党に賛辞を送ろう。そして、火のごときにわか信心の我が襟を正し、この世に安穏な仏国土が顕現するよう、我らの「アレ」を祈ってお題目を唱え、来る年を迎えたい。