1月の法話 「夢」のこと/末田真啓

人の睡眠には、眠っているがかすかに意識のある状態のレム睡眠と、意識が活動していないノンレム睡眠の二種類があり、夢を見るのは、ほとんどがレム期で、この時の脳波は覚醒時とほぼ同じ波形です。つまり身体は眠ってはいるが脳は眠っていない、かすかだが意識のある睡眠時に夢を見ているのです。

最近では夢はもっぱら心理学や精神分析の専門とするところとなっています。睡眠中に記憶が固定化され夢となって現れると説明されていますが、脳の研究は緒についたばかりでその解明は全体の百億分の一に満たないとも言われており、その全体像はまだ闇の中です。

また、夢には過去の記憶の再生だけではない、神秘的で不思議な側面があるように思えます。

火事の夢を見て一所懸命火を消しているつもりが、下半身が冷たくなって目を覚ますと、寝床が大変なことになっていたという苦い経験をされた方も多いことでしょう。成長期に高所から落下する夢を見ると、背が高くなるといわれて、一年に十センチ以上身長が伸びたことがありました。いずれも子供から大人へと成長していく過程での身体的な変化を夢が予知的に知らせてくれていたのかもしれません。

夢の内容で吉凶を占うことは今でも盛んに行われています。年が明けてはじめて見る初夢は、昔から「一富士、二鷹、三なすび」が縁起が良いといわれています。江戸時代の諺で、「一年を無事(富士)に過ごし、高(鷹)く上り、事を成す(なすび)」という掛け言葉説や、徳川家康の好物を並べたという説など諸説があります。皆さんはこの縁起の良い夢を御覧になったことがありますか。

お釈迦様に関する伝説にも、母の摩耶夫人は白象が胎内に入るのを夢にみて、お釈迦様を懐妊したと伝えられています。同じように中国や日本の高僧の誕生にも霊夢に関する伝説が多くみられます。

本年も、よい夢が見られる一年でありますように。