10月の法話 お会式/辻田教融

P1050204 十月は日蓮宗ではお会式の季節です。お会式とは宗祖のご命日を偲ぶ法要のことを言いますが、日蓮宗、とくに東京都大田区の池上本門寺のお会式は賑やかで有名です。

 日蓮聖人ご入滅の霊跡である池上本門寺のお会式は、全国から三十万を超える参詣者がつめかけ、十月十二日の夜に行われる万灯練り行列を楽しみにしておられます。

 お会式桜ときらびやかな提灯に飾られた万灯を中心に、団扇太鼓がトントコトン、鐘がチンカカカン、リズムに乗って笛の音がピーヒャラと響きます。万灯を先導するのは、江戸の火消し衆を彷彿とさせるまとい持ち。大きなまといを自由自在に振り回します。威勢のいい掛け声と共に歩く姿はお祭りさながら。まことににぎやかなものです。

 十二日の夕方に先頭の万灯が出発し、それから百基以上の万灯が、深夜まで続々と池上本門寺の大堂(祖師堂)を目指します。

 その大堂では、十二日の夕方から翌朝五時まで、途切れることなくお題目が唱え続けられます。堂内は檀信徒のみなさんが叩く団扇太鼓の音と、お題目を唱える声で溢れます。

 賑やかなお祭りの雰囲気から一転、十三日の朝の大堂は凛とした雰囲気に包まれます。堂内に隙間無く檀信徒がつめかけ、声をもらすことなく厳粛な空気が張り詰めます。

 日蓮聖人が亡くなられた午前八時、堂内に鐘の音が響きます。日蓮聖人がご入滅のときに実際に打ち鳴らされたといわれる「臨滅度時の鐘」です。この音が当時も響いたのかと思うと、涙が止まりません。

 日蓮聖人六十一年のご生涯は「ただ妙法蓮華経の七字五字を日本国の一切衆生の口に入れんとはげむばかりなり」との一心で、どんなに過酷な大難であろうともひるむことなくお題目を広められました。

 そのご遺徳を偲び、今私たちがお題目に出会えた喜びに感謝し、みなさまと共に賑々しくお会式法要を営みたいと思います。