10月の法話 冬瓜/新實信導

 「このカモリ美味しいから、食べなさいよ」と義母が夕御飯を食べながら言った。これを聞いた子どもたちは「カモリ?」「?…」

 『広辞苑』を開いてみると「かもうり【氈瓜】トウガ(冬瓜)の古称」とあるではないか。たぶんカモウリが訛ったのであろう。カモリ騒動の一幕であった。

 この冬瓜、正しくはトウガと読む。これが訛ってトウガンとなったという。また冬瓜は高温性の作物で、八~十月が収穫時期で、夏に採れても、冬を越えて貯蔵できることから冬瓜と呼ばれる。効用は、解熱、利尿促進、慢性便秘、毒消、疲労回復などがあるとか。

 ところで冬瓜といえば、幼いころ、私の通っていた小学校の行き帰りの途中の畑に冬瓜が積み重ねられ、段ボール箱のフタを裁断したものにマジックで「ご自由にお持ちください」と書かれているのをよく見かけた。冬瓜は実がなり出すとたくさん取れるから処分に困って書かれたものであろうと思っていた。

 とくに苦しめられたのは家の食事であった。朝食の味噌汁の具に冬瓜が、夕食には冬瓜の餡かけ、あるいは煮付けにされて食卓に並んだ。子供にとって、あの何とも言えない酸っぱい味とトロ~ッとした食感がイヤであったのを思い出す。しばらく冬瓜のオンパレードが続き、終いに冬瓜を見たくないほど、私にとっては恐怖の冬瓜であった。 今となっては、夏バテに冬瓜が身体に良く、一〇〇グラム中にビタミンC四一㎎、カリウム一七〇㎎、カルシウム一六㎎があるという。低カロリーで栄養が豊富でしかも長期保存が可能とうれしい限りである。

 「食物には三つの徳がある。一つには生命を保ち、二には容色を増し、三には力を蓄える。人に物を施せば我が身の助けとなる(食物三徳御書)」と日蓮大聖人は説示なされている。食物の有り難さ、これを自分だけではなく他人にも分け与えることにより、自身の功徳となるのだと。あの段ボール箱の文字が自慢げに思えたのであった。