10月の法話 食欲の秋、実りの秋/服部憲厚

 秋といえば食欲の秋、とは言うものの慌ただしい毎日を送る私たちにとって、ゆっくりと食事を楽しむ機会は少なくなっています。味わって食べるより、手軽にすばやくが今の食における流行かもしれません。

 先日私は、池田市にあるインスタントラーメン発明記念館へ行ってきました。お湯を注いで三分で美味しいラーメンが食べられる。カップ麺は私も日頃からお世話になっています。記念館では即席麺の発明に到るまでの苦労、小さなラーメン一杯の中に込められた技術や工夫が紹介されていました。

 発明者は日清食品創業者の安藤百福さん。戦後の混乱の中「食」の大切さに着目し自宅裏の小さな小屋で試行錯誤の研究の末、発明された「チキンラーメン」後に発売される「カップヌードル」は世界の人々に食され食文化を変えました。この世界の食文化を変えた発明は安藤さんの「食足世平(=食が世の中を平和にする)」という信念から生まれたのだと知りました。

 「正しい教えこそ世の中を安穏にする」これは仏様が人々に教えを説き続けられた信念です。一人も欠けることのない平等の救い、仏様の本心が法華経に説かれ、その法華経のエッセンス、仏様のすべてがお題目に凝縮されているのだと日蓮聖人は御教示されておられます。「仏様がすべての人々を救おうとされた修行とその悟りの功徳はお題目の中にすべて具(そな)わっています。よって私たちはそのお題目を受持する事で自然とその功徳を頂けるのです」(『観心本尊抄』)

 一杯のカップ麺の中に、安藤さんの情熱と知恵が込められているように、お題目の中にも仏様の大慈悲と智慧が込められていたのです。

 何も知らずに食べていたカップ麺、仏様の御心を知らず唱えていたお題目、カップ麺をすすりながら無知な自分を恥じています。

 食欲の秋、仏様の大慈悲に感謝し、お題目の醍醐味をじっくり味わって実りの秋にしたいものです。