2月の法話 井桁に橘(たちばな)/服部憲厚

P1000391 「お上人この紋はどういう意味があるのですか。」

日蓮宗の寺院へ行きますと、幕、仏具、湯呑等さまざまな所に「井桁に橘」の紋が入っています。ご信者様の質問はその紋のことでした。私は「日蓮宗の紋ですよ‥。」としか答えられず慌てて調べてみましたが『日蓮宗事典』にも記載がなく、意外とこの紋は謎が多いようです。

伝承によりますと、日蓮聖人の父君が、貫名重忠という名の元武士。井伊家の支流貫名家の家紋である。という説明がよくなされますが、聖人御自身「自分は旃陀羅(身分の低い民)の子である。」としか家系について述べられていません。

出生については諸説あり家紋だと言ってしまえばそれまでです。しかし日蓮宗といえばこの紋、というまで広く使われるようになったのは、何か深い意味がありそうです。

古来より、橘は日蓮聖人が好まれた植物と言われます。柑橘類といえばピンとくるかと思います。

当時の御信者方は、「柑子」(今でいうみかん)をよく日蓮聖人に御供養されました。好んで召し上がられた事が想像されます。又、四季を通じて常緑の橘は、永遠を表すそうです。

法華経に説かれる久遠の仏様を橘に譬えますと、その種や栄養が凝縮された果実は、お題目であります。

日蓮聖人が好まれた理由も頷ける気がします。

井桁、これは井戸を表すそうです。井戸は、水をたたえる大切な場所。守り伝えるべき所ともいえます。

橘紋を法華経、お題目の御教とみれば、その御教をよりどころとして大切に守り伝えていくことがこの井筒紋の示すところと考えられます。

この紋章が代々伝えてこられたことは信仰が大切に受け継がれてきた証です。私達も、次の世代に守り伝えなければなりません。

こたつにみかんが恋しい季節。頂く前にお祖師様に御供をいたしましょう。

二月十六日は日蓮聖人の御降誕会(お誕生日)であります。