12月の法話 今日のおかず/詠裡庵


 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に、十二月正式登録される見込みの「和食日本人の伝統的な食文化」。

 うれしいことです。世界のご馳走が毎日報じられる今日において、私たちが普段食べている今日のおかずも、その無形文化遺産の一つに入っているかも知れない。毎日のことだから、何にしようかと考え、時には面倒だと思いながら作るおかず、そんなおかずがユネスコから和食日本人の伝統的な食文化として認められる。わざわざ認めますということは、素晴らしいことと共に、食文化というものが変わりつつあるからではないだろう。

でも私たちは代々、食事を毎日作り続けてきた。特に子供には食べて育って欲しいという思い一杯で続けてきたと思う。

 日本の伝統的な一汁三菜の献立は、必要な栄養素も満たしているという。これもすごい。でも、おでんなら一汁三菜にしなくても、それ自体で栄養も充分あるし、伝統的な食事の中に入るのではないか。大根・ニンジン・芋・卵・練り物・かしわのスジ等々、何を入れても美味しい。身体を温めると言われている根菜類がよくあう。また、忙しい時にもぴったりだ。

 鍋物だと、もっとたくさんの食材が入る。鍋一つでそれぞれの食材の持ち味を楽しむことが出来る。身体も心も温める日本料理だ。

 明日へつなげていく力の源が今日の食事だ。いろいろな食材の持つ風味を大切にしながら、そこに昆布や鰹など魚のダシを使い、塩や醤油、味噌やお酢でほど良い味付けをして食べる。どんな形になっても大根なら大根の食感を大切にし、ほうれん草はほうれん草の食感を残しながら食べる食文化を、私たちは持ってきた。このような習慣的なものは、一人がして認められるものではない。代々に伝えられ伝えてきた日本中の人々の一人一人が、この素晴らしい文化の担い手だ。年月を越えて、遙か未来にまで、つなげていきたい、これこそが無形文化遺産だと思う。