2月の法話 月は…/末田真啓

 昨年九月に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」から送られてきた鮮明な映像は、「一人の人間には小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍」といわれたアポロ計画以来の大きな成果をもたらし、再び「月」が注目されています。

 「かぐや」の映し出したクレーターの向こうの暗黒の宇宙空間から昇ってくる青く美しい地球の神秘的な映像からは、映画「2001年宇宙の旅」のオープニングの印象的な交響曲「ツァラトウストラはかく語りき」の金管楽器の音とは違う、幽玄な雅楽の音色が響く竹取物語の美しい絵巻が見えるようでした。

 「かぐや」のホームページによると、今回の打ち上げには日本の誇る低コスト(?)高性能のH2ロケットが使われたそうですが、再々の打ち上げ失敗の映像を見ていただけに正直ヒヤヒヤものでした。

 その後順調に月の周回軌道に乗った「かぐや」は上空百キロから高精度のカメラによる、月の表面や内部の構造などの調査のための映像を地球に送信し、「月の起源」と「進化の謎」の解明に迫ると期待されています。

 私たちにとって「月」はもっとも身近な天体です。
月と地球は引力によって互いに強く結ばれているだけでなく、私たちの一生とも深く係わっています。妊娠・出産に始まり、節分・立春といった行事も、そして人生の幕引きも「月」の運行を無視することはできません。

『日本書紀』には、月の神様が海を治めると記述されており、潮の干満と月が深い繋がりがあることがわかっていたのです。

 日と月は、比喩としてよく使われます。
日蓮聖人の御遺文に「月は西より東に向へり、月氏(インド)の仏法の東へ流るべき相也、日は東より出づ、日本の仏法の月氏へかえるべき瑞相也」と、西方から伝来した仏法は、法華経の教えで末法の闇を照らし、再びお釈迦様が教えを説かれたインドの国へ還るという、独自の宗教観を「日月」に喩えて述べられています。