4月の法話 批判から肯定へ/宮本観靖

 先日、友人と会った時の事です。久し振りに再会したせいか仕事の事、将来の事等、色々な話に花が咲きました。楽しく、興味深い話の中で特に印象に残ったのは家庭の話です。

 彼は既婚者ですが、夫婦の間で一つルールを決めているというのです。それは「お互い短所は責めず、長所を褒める様にする」というものでした。

 友人が言うには「自分はそんなに立派な人間でもないし、悪い所もいっぱいある。でもいつも肯定的に褒めてもらえると、そんな人間になろうと頑張れるんや」という事です。

 「なかなか難しいけどな」と付け加えていましたが、私はこれを聞いて「法華経」に説かれている常不軽菩薩のお話を思い出しました。

 常不軽菩薩は「じょうふぎょうぼさつ」と読み、その名の通り常に人を侮らず軽んじず、いかなる人をも尊敬し拝んだお方です。

 何故、誰であろうと尊敬し、拝むことが出来たのでしょうか。
常不軽菩薩は「全ての人はいつか仏様になれるから」と仰っています。誰でも仏様の種を持っていて、それに気付き、その種を修行して育てれば、仏様と成る事が出来る。だから仏様と成る全ての人を尊敬し、礼拝するという事です。

 しかし中には、拝まれるとその趣意が解らず怒り出す人もいます。そんな人に罵られ、暴力を振るわれても常不軽菩薩はそれを避けながら、「皆さんは仏様に成れるお方です」と拝まれたのです。

 そこまでして全ての人を礼拝されるのは、その人に自分は必ず仏様に成れるという自覚を与え、またその様に成りたいという向上心を育てる為なのです。

 友人夫婦の行っている事は拝みこそしないものの、お互いに良い所を気付かせ、良い人間に成ろうと思う心を育み合う礼拝行といえるのではないでしょうか。

 お互いを批判し合う事が多い昨今、批判ではなく良い所を肯定する事から始めてみませんか。まずはあなたの隣にいる人から。