5月の法話 異常な欲/毛利観恭

三月十一日に起きた東日本大震災で被災された皆様が、一日も早く平穏な暮らしができますように、そしてお亡くなりになった方々のご冥福を日々お祈りしております。

地震直後からの買い占めが各地でおこり、その結果被災地に送るべき物資に影響が出たとの報道を見た時悲しみがこみ上げました。地震・大津波で家や職場や家族と大事な人や物を失った人々に物資が届かず、直接被害を受けていない人達が買い占めに走る。

私たちは物が無くなると思うと、必要以上に物を買ってしまいますが、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

私たちは物が無くなると思うから買い占めるのですがその明確な根拠は何もありません。今回も報道機関やメーカーが不足すると言ったわけではなく私たちが勝手に無くなると思いこんだのです。

蓄えるというのは、そこに欲があるからです。何か理由があっての欲はまだ良いのですが、今回のような思い込みで買い占めに走るのは異常な欲といえます。

このような異常な欲望を引き起こす一切の妄念を仏教では煩悩といい、あらゆる善根を流してしまうものと考えられています。一度この煩悩の激流に飲まれて

しまうと私たち凡夫はなす術がありません。今回の津波のように、逃げることも抗うこともできず、その欲のままに行動してしまうのです。

買い占めに走る人が途中で我れに返り理性を持って買うのをやめたという話は聞かず、むしろ他人を押しのけてまで買っていたような話を耳にします。これでは生きたまま餓鬼道に落ちているようなものです。

煩悩の激流に飲まれない為には、日頃から小欲を心がける必要があります。日蓮聖人は「あなたが、心から自分自身の安らぎを得たいと思うならば、何よりもまず、社会全体が平和になるよう祈るべきである」とおっしゃっています。それを心がければ私たちの欲は自然と減るはずです。