9月の法話 こんな時代だから/植田観肇
最近はガソリンの価格に毎月一喜一憂しています。食品もじわじわ値を上げ財布を締め上げてきました。また、先日の新聞ではついに景気が後退局面に入ったと報じられました。長引くサブプライムローン問題やいつまでもくすぶる戦争やテロのニュース。最近いい話は聞きません。
社会の情勢が不安定になってくると、今まではそこそこ成功していた事が途端にうまくいかなくなったりして、自分がやっていることが本当に正しいのか不安になってきます。
それは信仰においても同じで、失敗が続くとお題目を唱えても意味がないんじゃないかと勘ぐってしまいたくなるのは我々凡夫の悪い癖です。
日蓮聖人の生きておられた鎌倉時代も地震や疫病で社会不安が蔓延しておりました。そんな中で聖人は教えを広げていかれたのですが、当時の政府である鎌倉幕府に諫言を行ったことから幕府に逆らう者として激しい弾圧を受けることになります。その弾圧の最たるものが竜口法難でした。幕府に反逆するものとして竜口の刑場で頸を切り落とされそうになったのです。
当時の幕府はこの法難を契機に日蓮教団への弾圧をさらに強くしました。聖人は佐渡へ流罪になり、有力な門弟はとらえられ、信徒には所領没収などの罪科が課せられました。このような中「千が九百九十九人は堕ちて候」(『新尼御前御返事』)というように数々の弾圧の前に不安になって信仰をひるがえす人が続出しました。
その状況にも関わらず、聖人はいっそう思索を深め死を覚悟して開目抄と観心本尊鈔を執筆されました。これによって法華経信仰の正当性を再確認され、弾圧の下で再び信仰の輪を広げていかれたのです。
今は先が見えない暗い世の中ですが、その道を照らしてくれるのは法華経でありお題目です。聖人が生命を懸けて説いて下さった法華経を私たちも深く信じてお題目を唱えれば道は必ず明るく照らされます。