9月の法話 ザックの背負いかた/植田観肇

 日蓮宗徒なら一度は登っておきたい山がある。総本山久遠寺の飛び地境内になっている七面山だ。先日、この七面山に登るという大義名分ができたので、前から欲しかった立派な腰ひもつきの本格的な登山用のザックを意気揚々と買いに行ってきた。

 七面山登詣においては登山用のザックはバランスが良く、とても背負いやすかったし、腰ひもの所に簡単な収納もあり、あめちゃんを入れたりと、とても重宝した。心持ち疲労も軽かったような気がする。

 後日、登山ギアメーカーの方と話す機会があり、先日の体験をふまえて、バランスが良いなどと多少知ったかぶりをして話したところ「ところで、ザックの背負いかたはご存じですか」と質問された。

 ザックに背負いかたがあるなど考えたこともなかったので、改めて専門家から問われると、なんだか今まで自分が話してきたことが全て上っ面だけの話しだったように思えて、額から汗がでてきた。

 答えを聞くと、ザックは腰ひもが大切だという。誰かをおんぶするように腰でザックを背負い、おんぶ紐のようにギュッと絞る。あとは肩がずれないように肩ひもを調整し、大体7対3くらいの荷重割合で、腰で背負うのだという。腰ひもはあめちゃんを入れる便利なポッケのためだけにあるのではなかったのだ。

 今までより数倍持ちやすくなったザックを背負いながら、正しい知識を知らないと宝の持ち腐れになるのだと改めて思い知った。

 このような事は良くあることだが、私たちが毎日お唱えするお題目でも、正しい信仰のもとにお唱えするのと、ただタイトルを声にだして発音しているだけでは、その意味や功徳は数十倍も違ってくるのではないだろうか。

 九月十二日は日蓮聖人龍口法難のご聖日。生涯をかけて実践してこられた日蓮聖人のお題目の修行に思いを馳せ、私たちも一語一語心を込めてお唱えし、実践していきたい。