12月の法話 お習字/詠裡庵

「おばあちゃん、私もやってみたーい」

  私が筆を使って、お便りを書いているときです。孫がそばにやって来て、筆を使っている私の手元をじっと見ていました。

「じゃあ、これに書いてごらん」

 私は嬉しくなって、筆とこれから書こうとしていた用紙を一枚渡しました。すると、小さな紙に名前をひらがなで、幅いっぱいに大きく書いていました。はじめて筆を使うのですから、鉛筆のように書いています。 孫は鉛筆やクレヨンはよく使っていました。役目を終えた包装紙をテーブルいっぱいに広げて、花や人形を紙面のあちこちに書いていました。ところが習字の筆は、鉛筆やクレヨンで書く字と違うことに、ちょっと興味を持ったのかもしれません。

 私は習字がうまいとは言えません。まさか孫に教えることになるとは思いもしませんでした。

 思えば、私が習字を習ったのは小学生の頃でした。バスの乗り降りができるようになり、習字の先生の家まで一人で行けるようになったということで、親が習わせようとしたようです。二つ年上の姉と習いに行きました。

 どんな練習をしたのか、今となっては思い出すこともできません。ただ、習字の帰りには、自宅の近所にはない本屋さんがあり、雑誌を買うことができたのがとても嬉しい想い出となっています。

 あの頃習ったことを思い出しながら、

「字を書き出すときには、筆の先を少し押さえてから書くといいよ」

 孫にそういうのですが、私では上手く教えることができません。これがきっかけとなり、孫は先生について習うようになりました。

 かつて筆は日常の道具の一つでした。でも今は使う人は限られているのが実情です。墨と筆を使って字を書き残すことにより、仏の教えも今に伝えられているのです。時には改まった気持ちで写経に挑んでは如何でしょうか。